
SDGsの目標2に出てくる種子バンク(シードバンク)って、なんとなく想像はつくけど、具体的にどのような仕組みなんだろう··?
こういった疑問に答えます。
本記事を読めば、シードバンクの概要がわかり、『こういうものなんだよ』と人に説明できるようになります。
シードバンクは、気候変動の被害を被っている人類にとって、希望となり得る存在なので、知っておきたいキーワードです。
シードバンク(種子銀行)とは?

シードバンク(種子銀行)の意味
シードバンクは、
- Seed:種子、タネ
- Bank:銀行
と分解でき、種子の銀行のことです。
具体的には、植物の種子を保存するための施設です。
目的は、遺伝的な多様性を維持すること。
まずはシードバンクの背景を説明しますね。
現在、環境破壊や気候変動によって、絶滅する植物が増えているんです。
ストックホルム大学と英国王立キュー植物園の合同調査によると、この250年間で571種の植物が絶滅したとのこと。
これは、人類が存在していない自然の状態と比較して500倍も速いそうです。
生態系のバランスを維持して、人間を含めて長く生存していくためには、現存する植物種を守り活かしていくことが欠かせません。
植物は、食物連鎖のベースを形成していますし、水や大気の浄化にも重要な役割を果たしているので、植物の絶滅は連鎖的に様々な動植物の絶滅を引き起こす可能性があるのです。
そこで、植物が絶滅しないように保存して次の世代に遺していく役割を、シードバンクが担っているわけですね。
シードバンクの事例
国内外には色々なシードバンクが存在します。
本記事では、3つご紹介します。
農業生物資源ジーンバンク
農業生物資源ジーンバンクは、茨城県つくば市に本拠を置くシードバンクです。
『ジーンバンク』は『遺伝子の銀行』という意味で、種子を対象としたシードバンクよりも広い概念です。
なので、シードバンクはジーンバンクのひとつと言えます。
農業生物資源ジーンバンクは、つくば市に本部(センターバンク)を設置し、全国各地にサブバンクを置いています。
サブバンクの配置はパンフレットをご覧いただきたいのですが、結構全国に散らばっています。
自然災害等でサブバンクがダメージを受けることも想定されるので、分散させることはリスクヘッジになっていますね。
また、扱う資源の種類は以下の4つです。
- 植物
- 微生物
- 動物
- DNA
農業生物資源ジーンバンクは、これら4つの様々な種子や遺伝資源を保存するとともに、遺伝情報の調査結果を公開したり、遺伝資源に関する国際交流をしています。
キュー植物園
キュー植物園は、ロンドンにある英国王立の植物園です。
正式な名前は、『Royal Botanical Garden, Kew』(ロイヤル・ボタニカル・ガーデン・キュー)です。
1759年にジョージ3世の母であったオーガスタ王妃が、9エーカー(200m×200mより少し狭いくらい)の植物園を作ったのが始まりです。
今では、世界に名だたる植物研究施設となり、所属する350人以上の科学者が世界中で調査研究を行なっています(展開先の国はこちら)。
スヴァールバル国際種子貯蔵庫
スウェーデンにあるシードバンクで、スヴァールバル諸島のスピッツベルゲン島に鎮座しています。
正式な名前は、『Svalbard Global Seeds Vault』(スヴァールバル・グローバル・シーズ・ヴォールト)です。
スピッツベルゲン島の場所はこちら。
ビル・ゲイツが主導していることで知られるこの施設は、2008年に産声を上げました。
外観が秘密基地のようでワクワクしますね。
施設の概要をざっくりと挙げてみます。
- 山の中100メートルの内部にある
- 40-60メートルの厚さの岩盤に囲まれている
- -18℃に保たれている
- 永久凍土層の中にあるため、空調が切れても-4℃に維持される
- 3つの保存庫を持ち、それぞれ150万種の種の貯蔵が可能
- 現時点では90万種が貯蔵されている
堅牢な作りで、温度環境も考えられていますね。
最近では、温暖化の影響によって永久凍土層が溶けて、トンネルの入口に水が流れ込んだとのことです。

内部の冷凍室には影響がなかったとのことですが、この『現代版・ノアの箱舟』は何年後まで機能してくれるのか、少し不安になります。
続いて、シードバンクの利点やデメリット、疑問点を説明します。
シードバンクの利点
種の保存が可能になる

種の保存が可能になる
シードバンクの目的そのものです。
僕は地球の複雑な生態系を理解しているわけではないので、種が減っていくことがなぜ悪いのかを整理して説明することは、荷が重いです。
しかし、複雑な生態系であるからこそ、植物種が欠けていくことで機能しなくなる恐れは十分にあります。
シードバンクによって種子が保存されていたら、絶滅しそうになったとしても貯蔵庫から種子を取りだして再び繁殖させることができます。
食糧危機に備えられる

食糧危機に備えられる
ほとんどの人は、肉や魚だけではなく、野菜や果物などの植物も食べます。
こういった植物が絶滅してしまうと、人類の食料に黄信号が点灯します(赤信号かも)。
食料がなくなることは生命の存続危機を意味するので、絶対に避けたい事態です。
シードバンクがあれば、現在の食料となっている植物の種子も保存しておき、食料危機の際には再び栽培して食料を賄うことができますよね。
次に、シードバンクはメリットだけではないので、負の面も見つめてみます。
シードバンクのデメリット、疑問点
利権の温床になる可能性がある

利権の温床になる可能性がある
シードバンクには、多くの種子が保存されています。
将来、植物が不足した際には、シードバンク内の種子の価値は高くなるでしょう。
その時、『待ってました!』と言わんばかりに高値を付け、政治的·経済的な駆け引きを行うことが考えられます。
冷たい言い方をすれば、需要と供給のバランスによる単純な経済原理ですが、世界の危機に暴利を貪ろうとする輩がいないとは限りません。
一部の者がシードバンクの種子を所有することは、こうしたリスクをはらんでいると思います。
気候変動に追従できるのか不明

気候変動に追従できるのか不明
僕の単純な疑問です。
気候変動が進んだ未来、シードバンクに貯蔵された種子を地上に出す頃には、その種子は未来の気候に適応できるのか、甚だ疑問です。
そもそも、シードバンクの中の種子が活躍するタイミングは、植物種の絶滅が進んだときです。
絶滅の原因は複数あると思いますが、気候変動が主要因だと考えられます。
現在ですら250年間で571もの植物種が絶滅しているのに、気候変動が進んだ未来では、植物は耐えられるのでしょうか。
気候変動ありきでシードバンクを用意することは、リスクに備える方法として良いとは思います。
しかし、シードバンクがあるから気候変動を許容するのではなく、まずは気候変動を抑制することを最優先に考えていきたいものですね。
まとめ
本記事では、『シードバンク』の内容や事例、利点やデメリット・疑問をご説明しました。
シードバンクは、気候変動に伴う植物種の絶滅に備えて、植物の種子を保存するための施設のことです。
シードバンクの例として、以下の3つを挙げました。
- 農業生物資源ジーンバンク(日本)
- キュー植物園(イギリス)
- スヴァールバル国際種子貯蔵庫(スウェーデン)
また、シードバンクの利点として以下を挙げました。
- 種の保存が可能になる
- 食糧危機に備えられる
一方、デメリットとして、
- 利権の温床になる可能性がある
を挙げ、個人的な疑問として
- 気候変動に追従できるのか不明
を説明しました。
本記事が参考になったのならうれしいです。
コメント