
『持続可能な農業』といえば聞こえはいいけど、課題もあるんじゃないかな?
ご明察のとおり、持続可能な農業には確かに課題があります。
一方で,課題をクリアするための方法もあると考えています。
本記事では、以下の内容をやさしい言葉で解説します。
- 持続可能な農業の意味
- 持続可能な農業の課題
- 持続可能な農業のためにできること
身近な食べ物を生み出してくれる農業。
ありがたい存在ですが、普段は関心を寄せられない場合が多いです。
本記事を読んで、少しだけでも農業に想いを馳せてみてくださいね。
持続可能な農業とは

持続可能な農業とは
持続可能な農業の定義が世界的に合意されているわけではないですが、農林水産省の表現を借ります。
『環境保全型農業推進の基本的考え方』(平成6年(1994年)4月)によると、以下の通りです。
要するに、『生産性を高めるために工夫するけど、環境への負荷は軽減させた農業』ですね。
農業が発展するには、生産性を高めて経済的に成り立つ事業にすることが前提です。
利益が出る事業なら、やろうとする人もいるだろうし、人が増えれば競争が生まれて質よくなります。
しかし、生産性を求めるがあまり、強烈な化学肥料を使ってしまうと、土壌や地下水の汚染だけでなく、人体への影響も問題になります。
また、焼畑農業を際限なく行うと、森林の生態系を破壊してしまうし、大量の二酸化炭素を排出することになります。
このような農業では、地球環境や人間社会とともにずっとやっていけませんよね。
いつか破綻します。
『持続可能な』の言葉にあるとおり、地球環境や人間社会とともに長く続けていける農業が『持続可能な農業』なのです。
SDGsに登場する持続可能な農業

SDGsに登場する持続可能な農業
持続可能な農業は、SDGsの目標2『飢餓をゼロに』に深く関連します。
具体的には、ターゲット2.4です。
2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
持続可能な食料生産システム、とか、強靭(レジリエント)な農業がまさに『持続可能な農業』です。
持続可能な農業の課題

持続可能な農業の課題
僕は、持続可能な農業の課題は2つに代表されると考えます。
- 生産性を向上させる
- 販売価格を上げる
個別に説明しますね。
生産性を向上させる
持続可能な農業は、とにかく手間がかかります。
使う肥料を有機肥料にすると、虫がつきやすく病気にもなりやすいので、頻繁なケアが必要です。
除草剤を安易に使うと、土壌汚染につながったり、人体への影響も否定できません。
なので、雑草の除去にも人手が必要になります。
これだけ手間暇がかかると、作物の育成と収穫にかけられる労力が減り、結果的に生産性が落ちてしまいます。
生産性が落ちて収穫量が減れば、収入も減ってしまい、農業が営むことが難しくなってしまいます。
なので、1つめの課題は、生産性を向上させることです。
少ない手間で多くの収穫を得るってことですね。
販売価格を上げる
生産性を劇的に伸ばせればいいですが、そうでなければ、手間暇(人的コスト)が販売価格に乗っかります。
販売価格を変えない場合、手間暇が増えてコストも増えるので、利益が少なくなってしまいます。
これまた農業経営が難しくなります。
利益を出して、設備に投資したり、生活を豊かにするものでないと、誰もやりたがりませんよね。
2つめの課題は、販売価格を上げることです。
持続可能な農業のためにできること

持続可能な農業のためにできること
以下の2つが課題だと説明しました。
- 生産性を向上させる
- 販売価格を上げる
では、この課題をクリアするためにできることを説明します。
それは、
- スマート化
- 地産地消
- ブランディング
の3つだと考えます。
スマート化

スマート化
スマート化とは、IT化や自動化と思ってもらえたらOKです。
農業に適用した場合、『アグリテック』などと呼ばれたりします。
例えば、作物の状態を監視する場合、ドローンの映像を人工知能が解析して、病気や育成状況を可視化することもできます。

わざわざ人が歩いて見る必要がないので、節約できた時間を他の作業に充てられますよね。
コスト削減につながるわけです。
作物を育成する場合もそうです。
トマトの水耕栽培の事例がありますが、育成状況に合わせて養液を最適に自動調整して与えています。
僕はこのトマト『レッドジュエル』を食べたことがありますが、めちゃくちゃ甘くて美味しいんです。

自動化できるところはテクノロジーに任せ、人間にしかできない作業に集中して、生産性を高める。
これがスマート化の目論見です。
地産地消

地産地消
地産地消は、その地域でとれた作物をその地域で消費することです。
使い古された言葉ですが、実質的に意味があるんです。
作物を運ぶにはコストがかかります。
遠ければ遠いほど、コストは高くなっていきます。
コストが高くなれば、販売価格を上げざるを得ません。
しかし、作物そのものの価値ではなく『遠くから運ばれてきた』というだけのコストが乗っているんです。
中身の薄い値上げだと思いませんか?
地産地消であれば、運ぶ距離が短いので、運搬コストを下げることができ、販売価格が無駄に上がることを防げます。
その分、作物自体の価値を高めることで販売価格に転嫁しやすいですよね。
消費者がどちらを選ぶかは、問うまでもないでしょう。
- 品質は普通で遠くからの運搬コストが高くて値段が高い
- 運搬コストは安いが品質が高いから値段が高い
さらに言うなら、遠くまで運ぶにはエネルギーが必要です。
ガソリンを使えばそのまま二酸化炭素排出量が増えます。
電車や電気自動車だとしても、日本の電力の8割は火力発電由来なので、同じく二酸化炭素排出量の増加につながります。
運送距離が短ければ、二酸化炭素排出量の増加を抑えられるわけですね。
地産地消には、消費者にも農家にもうれしいメリットがあるのです。
ブランディング

ブランディング
持続可能な農業の生産性を向上させてコスト増加を抑制し、地産地消でもコスト増加を抑制する。。
それだけでは十分ではない可能性もあります。
どうしてもコストがかかり、値段を上げざるを得ないかもしれません。
そんなとき、ブランディングが必要になります。
『確かに値段は高いけれども、味や健康面、環境への貢献など、高い値段に見合うだけの価値がある』と、消費者に思ってもらうためです。
プレミアム感のある広告やパッケージ、販売店舗の工夫、感動を覚えるストーリーなどを付加することで、その作物のブランドを築くのです。
いまではソーシャルメディアで安く広告宣伝できる時代ですから、ブランディングのための費用も以前ほど高くはありません。
ブランディングによって消費者が値段に納得して買ってくれたら、適切な利益をもらえるので、さらによい農業のために投資できるし、やりたい人も増えますよね。
まとめ
本記事では、持続可能な農業について解説しました。
持続可能な農業とは、要するに『生産性を高めるために工夫するけど、環境への負荷は軽減させた農業』です。
SDGsの目標2『飢餓をゼロに』のターゲット2.4に関係しています。
課題としては、
- 生産性を向上させる
- 販売価格を上げる
がありました。
これらの課題をクリアするためにできることとして、
- スマート化
- 地産地消
- ブランディング
をご紹介しました。
僕らの生命にも直結する農作物ですから、持続可能な農業を盛り立てて、美味しくて健康的な野菜を長く楽しみたいですね。
コメント
[…] つ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 […]