
SDGs(持続可能な開発目標)について理解したい。
教科書的な講釈はもういいから、事業で使えるように事例で学びたい!
そういったご要望に以下の内容でお答えします。
- SDGsの目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)の具体的な内容
- 目標9に関する企業の取り組み事例3つ
企業の取り組み事例に力を入れているので,記事を読み終えると,SDGsの目標9を実践的に理解できます。
実践的に理解することで、事業提案に活かすヒントが見つかったり,ディスカッションに深みが増しますよ。
SDGsにピンと来ない方は,ひとまずこの動画で勢いをつけてからどうぞ。
SDGsの目標9『産業と技術革新の基盤をつくろう』の【必要性】

SDGsの目標9『産業と技術革新の基盤をつくろう』の【必要性】
SDG目標9についてわかりやすい動画があります。
『大体こんなイメージ』を掴みたい場合におすすめです。
SDGs目標9がなぜ必要なのか,数字で考えてみます(出典1、出典2)。
- 38億人:インターネットにアクセスできていない人の数
- 30億人:基本的な公衆衛生施設(トイレとか)を使えていない人の数
- 10人中3人:きれいな飲料水を飲めていない人の数
- 45%:全世界におけるハイテクorミドルハイテク産業の製造付加価値の割合
- 15%:サブサハラ(※)におけるハイテクorミドルハイテク産業の製造付加価値の割合
- 2兆ドル:2018年における研究開発に対する全世界の投資額(2000年は7,390億ドル)
人類の約半分が,ネットもトイレも水道も十分に使えていません。
トイレや水道は人間が生きる上で重要なサービスですし,様々な便利サービスがネット前提で提供される世の中では,ネットも重要です。
また,技術革新!イノベーション!ハイテク産業礼賛!というわけではないですが,ハイテク産業が伸びる前提として基礎インフラの整備がありますし,ハイテク産業は高付加価値なので収益も伸びて人々の生活水準も向上します。
なので,年間2兆ドルもの金額を新たな研究に投資しており,投資額が今も増えているわけです。
近代化させていく中で基礎的なインフラも整備し,付加価値の高い産業を育てて生活水準を向上させていく。
SDGs目標9が存在する意義ですね。
SDGsの目標9の【具体的内容】
5Psの中の目標9の位置づけ

5Psの中の目標9の位置づけ
SDGsには5つの柱があり,僕は5Ps(ファイブ・ピーズ)と呼んでいます。
5つの柱はすべてアルファベットの“P”で始まるからですね。
具体的には,以下の5つです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
SDGsの17個の目標は,この5Psのどれかの分野に関するものです。
目標9は産業と技術革新の基盤なので,『Prosperity(繁栄)』に該当します。
5Psについては別の記事でしっかり説明したので,興味があればぜひお読みください。

SDGsの目標9~産業と技術革新の基盤をつくろう

目標9~産業と技術革新の基盤をつくろう
SDGsの目標9は『産業と技術革新の基盤をつくろう』です。
ロゴの英語版では『Industries, Innovation and Infrastructure』(インダストリーズ・イノベーション・アンド・インフラストラクチャー)と書かれています。
直訳すると『産業,イノベーション,そしてインフラ』ですかね。
SDGs宣言文の原文では以下の通りに書かれています。
Build resilient infrastructure, promote inclusive and sustainable industrialization and foster innovation
『レジリエントなインフラを構築し,包括的かつ持続可能な産業化を促進し,イノベーションを生み出していく』と訳してみます。
目標9の8個のターゲット

SDGs-目標-ターゲットの関係
SDGsには17個の目標から成り立ち,17個の目標は169個のターゲットから成り立っています。
階層構造ですね。
SDGsの目標9をさらに具体的な達成目標に分解すると,以下の8個のターゲットになります。
No. | 内容 |
9.1 | 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 |
9.2 | 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。 |
9.3 | 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。 |
9.4 | 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 |
9.5 | 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。 |
9.a | アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。 |
9.b | 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。 |
9.c | 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供できるよう図る。 |
一般的な知識はここまでにしましょう。
目標9を実践的に理解するために、企業の取り組み事例を見ていきます。
SDGsの目標9【企業の取り組み事例3つ】
今回ご紹介するのは、以下の3つの企業・団体の取り組みです。
- NGP日本自動車リサイクル事業協同組合
- 株式会社JVCケンウッド
- 一般社団法人京都試作ネット
NGP日本自動車リサイクル事業協同組合の取り組み:リサイクル部品流通の仕組み形成

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合の取り組み:リサイクル部品流通の仕組み形成
NGP日本自動車リサイクル事業協同組合は,全国の自動車リサイクル会社によって構成される組合です。
自動車の部品点数はエンジン式の場合30,000点にも及ぶと言われています。
廃車する際,まだまだ利用できるものもたくさんありますし,多少壊れていても修理すれば使えるものもあります。
NGPは,こうした部品のリサイクルをする『流れ』を作る役割を担っています(下図参照)。

NGPの自動車リサイクルの流れ
(画像は同組合Webサイトから引用)
自動車リサイクルは1社だけでは完結しません。
『組合』の形をとることで,多くの事業者を巻き込んで『業界全体の流れ』を作っていくことができます。
1社では成し遂げられないことを『組合』にすることで成し遂げられるのです。
SDGsの目標9との関係を考えると,同組合の取り組みはターゲット9.4の達成に貢献すると考えられます。
リサイクルすることによって新たな天然資源を投入する量が減り、同じ資源を何度も使えるので,『資源利用率の向上』に該当しますね。
2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
JVCケンウッドの取り組み:イノベーションアクト

JVCケンウッドの取り組み:イノベーションアクト
JVCケンウッドは,神奈川県横浜市に本社を持つ精密機器の会社です。
オーディオやカーナビでご存知かもしれません。
JVCケンウッドは,『イノベーションアクト』と呼ばれる環境づくりに取り組んでいます。
具体的には以下の3つの活動です。
- 技術アイディアコンテスト
- 新規事業創出活動
- アイディア提案/ディスカッションBOX
『イノベーションアクト』には特設サイトがあり,下図のようなトップページになっているそうです。

イノベーションアクトのサイトトップページ
(画像は同社Webサイトから引用)
他の企業でも『アイディアを受け付けている』と謳ってしているところはありますが,直属の上司に口頭で提案するだけのものだったりします。
直属の上司は話しやすくていいのですが,日々の業務のちょっとした改善ならともかく,革新的なアイディアを受け止められる上司ばかりではありません。
社歴が長く慣習に染まり切った上司に革新的なアイディアをぶつけたところで,リアクションは想像できるとおりです。
アイディアを思い付いた人のモチベーションは急降下間違いなし!

アイディアを即座に否定されると落ち込む
その点,特設サイトのようにワンクッション置く仕組みがいいと思っています。
その場でカウンターのような否定がなされるわけではないので,落ち着いて案をまとめて提案できますよね。
革新的なアイディアは部署の範疇を超えることが多いので,専用の制度を設けて専用部署がレビューした方が客観性をもたせられます。
SDGsの目標9を考えると,JVCケンウッドの取り組みはターゲット9.5の達成に貢献すると考えられます。
2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
京都試作ネットの取り組み:気軽な試作マッチング

京都試作ネットの取り組み:気軽な試作マッチング
京都試作ネットは,京都府京都市に本社を置く一般社団法人です。
京都試作ネットは『試作を依頼したい人と,試作が可能なものづくり会社とのマッチング』に取り組んでいます。
僕も開発に携わることがありますが,アイディアを空論で話し合っていても埒が明きません。
『アイディアを現物にして,目の前で弄り回しながら議論したいのに。。。!』と歯がゆい思いをします。
京都試作ネットがあれば,その願いは叶いますよね!
実際に形にしてみて初めて気付くことって多いので,アイディアを磨き上げることに大いに貢献していると思います。
イノベーション(技術革新)の創出に貢献していますね!
SDGsの目標9を考えると,京都試作ネットの取り組みはターゲット9.5の達成に貢献すると考えられます。
2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。

まとめ
SDGsの目標9『産業と技術革新の基盤をつくろう』は,5Psのうち『Prosperity(繁栄)』に関するものでした。
また,目標9に関する企業の取り組みとして以下をご紹介しました。
- NGP日本自動車リサイクル事業協同組合:リサイクル部品流通の仕組み形成
- JVCケンウッド:イノベーションアクト
- 京都試作ネット:気軽な試作マッチング
本記事を通して,SDGs達成への取り組みがどういうものか,イメージを持っていただけたら嬉しいです。
SDGs関連の記事をこれからも作っていきますので,また読みに来てくださいね(^^)
コメント
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