
SDGs(持続可能な開発目標)関連の提案を考えているんだけど、他の会社はどのような取り組みをしているんだろう?
事例はあるかな?
そういった疑問に以下の内容でお答えします。
- SDGsの目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)の具体的な内容
- 目標7に関する企業の取り組み事例3つ(ダイジェスト)
記事を読み終えると,SDGsの目標7を実践的に理解できます。
実践的に理解することで、事業提案に活かすヒントが見つかったり,ディスカッションに深みが増します。
SDGsにピンと来ない方は,ひとまずこの動画をどうぞ。
SDGsの目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』の【必要性】

SDGsの目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』の背景
なぜ目標7が重要なのか?
このように問われたら,僕ならこう答えます。
『目標7は,SDGsの他の目標を達成するために必要だから』
考えてもみてください。
例えば,飢餓を無くす(目標1)ために農作物を生産する必要がありますが,農耕機械を動かしたり,運んだり,調理するために,電気や熱を使いますよね?
まさか人力で全てやれなんて言わないですよね?!
今の人類文明を支えていくには,エネルギーが必要なのです。
では,目標7を2つの要素に分けて考えてみます。
- エネルギーを十分に供給する
- クリーンなエネルギーを供給する
エネルギーを十分に供給する
『十分に』は,さらに2つの要素に分かれると考えられます。
- ①今現在,十分か
- ②長期間,十分か
①今現在のことを,わかりやすい数字で見てみます(出典)。
- 30億人:調理のためのクリーンな燃料すら確保できない人数
- 400万人:上記が原因で平均よりも早く亡くなる人数
- 5億7,300万人:サブサハラ地域で電気を使えない人数
エネルギーが不十分であることは,人命にも影響してくるのですね。
また,電気を使えないということは,ポンプを使えないことを意味します。
なので,電気を使えないサブサハラ地域の場合,女性たちが水汲みのために何時間も歩くことになります。
これは目標5(ジェンダー平等を実現しよう)と目標6(安全な水とトイレを世界中に)の達成を阻害します。
さらに,電気をつかえないと子どもたちが家で勉強できないので,目標4(質の高い教育をみんなに)の達成も阻害します。
エネルギーを使えないことは,SDGsの他の目標の達成を阻害しかねないのです。
②長期間のことを考えてみます。
化石燃料のように,
- 燃料が生成する速度:数百万年~数億年と超遅い
- 人間が消費する速度:数百年
と,生成と消費の速度のバランスが全く合っていない燃料を使うと,エネルギーの供給を持続できません。
長期的に供給できないのです。
つまり,『サステナブル(持続可能)』ではないと言えますね。
なので,化石燃料ではダメで,長期間供給し続けられる他のエネルギーが必要です。
クリーンなエネルギーを供給する
『クリーン』も2つの要素を持っていると考えられます。
- ①汚染物質を出さない(又は少ない)
- ②温室効果ガスを出さない(又は少ない)
①については,まず槍玉に挙げられるのは石炭と石油ですね。
両方とも,大気汚染物質のNOx(窒素酸化物の総称)やSOx(硫黄酸化物の総称)を多量に排出します(例えば,石炭火力発電所の排ガスの参考組成)。
根本的に,石炭や石油を使った電力や熱を回避する必要があります。
②については,現時点の多数説に従うと,二酸化炭素などの温室効果ガスを大気中に放出しないことが求められます。
石炭や石油,天然ガスなどの化石燃料は多量の二酸化炭素を排出しますので,エネルギー源から排除することが望ましいです。
SDGsの目標7の【具体的内容】
5Psの中の目標7の位置づけ

5Psの中の目標7の位置づけ
SDGsには5つの柱があり,僕は5Ps(ファイブ・ピーズ)と呼んでいます。
5つの柱はすべてアルファベットの“P”で始まるからですね。
具体的には,以下の5つです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
SDGsの17個の目標は,この5Psのどれかの分野に関するものです。
目標7は社会の発展に関するものなので、『Prosperity(繁栄)』に深く関係しています。
5Psについては別の記事でしっかり説明したので,興味があればぜひお読みください。

目標7~エネルギーをみんなに そしてクリーンに

SDGsの目標7~エネルギーをみんなにそしてクリーンに
SDGsの目標7は『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』です。
英語では『Affordable and Clean Energy』(アフォーダブル アンド クリーンエナジー)と書かれています。
『十分でクリーンなエネルギー』そのままですね。
原文では以下の通りに書かれています。
Ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy for all
『十分で信頼性が高く,持続的で現代的なエネルギーを確実に全員に届ける』と訳してみます。
目標7の5個のターゲット

SDGs-目標-ターゲットの関係
SDGsには17個の目標から成り立ち,17個の目標は169個のターゲットから成り立っています。
階層構造ですね。
SDGsの目標7をさらに具体的な達成目標に分解すると,以下の5個のターゲットになります。
No. | 内容 |
7.1 | 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 |
7.2 | 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 |
7.3 | 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 |
7.a | 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。 |
7.b | 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国の全ての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。 |
一般的な知識はここまで。
目標7を実践的に理解するために、企業の取り組み事例を見ていきます。
SDGsの目標7【企業の取り組み事例3つ】
今回ご紹介するのは、以下の3社の取り組みです。
- Abalance株式会社
- GSアライアンス株式会社
- アサヒグループホールディングス株式会社
Abalanceの取り組み:カンボジアへの太陽光発電設備の寄贈

Abalanceの取り組み:カンボジアへの太陽光発電設備の寄贈
Abalanceは,東京都品川区に拠点を置く会社であり,グリーン電力,建設機械及びIT事業を手掛ける会社です。
Abalanceは,カンボジアのワレン市に発電出力10kWの太陽光発電設備を寄贈しました。
パネルの大きさを想定すると,50m2くらいでしょうかね。

50m2。。。小さ。。い。。?

大きさじゃなの!
『寄贈』だよ?
それに規模はどうあれ,取り組みをすることが大事だよ!
SDGsの目標7を考えると,Abalanceの取り組みはターゲット7.2の達成に貢献すると考えられます。
太陽光は再生可能エネルギーですからね。
2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
↓Abalanceの取り組み↓
GSアライアンスの取り組み:非可食性バイオマスからエタノール生産

GSアライアンスの取り組み:非可食性バイオマスからエタノール生産
GSアライアンスは,兵庫県川西市に拠点を置く会社で,環境・エネルギー分野向けの先端材料の研究開発メーカーです。
GSアライアンスは,食べられない木材からエタノールを製造することに成功しました。

食べられない木材・・・?

そう,ここでは『食べられない木材』がポイントなんだよ。
あなたはバイオエタノールをご存知でしょうか?
植物を原料にして作ったエタノールのことです。
『石油から作らずに植物から作るからエコ!』と言われ,以前はトウモロコシやサトウキビが原料になっていました。
しかし,トウモロコシやサトウキビは人間や動物の食糧ともなりうるので,エタノールの原料にすると,人間や動物の食糧が減ってしまいます。
持続可能(サステナブル)ではないですよね?
そこでGSアライアンスは,人間(たぶん動物も)が食べない竹などの木材を原料として,エタノールを製造する技術を開発したのです。
GSアライアンスは,さらに開発を進めて,廃木材,廃紙,食品ごみなどからもエタノールを作ることにもチャレンジするようです。
エタノールは自動車や航空機の燃料に添加してエネルギー源として利用できますが,石油からではなく『本来は捨てられていたもの』が原料になればリサイクルってことですよね!
持続的なエネルギーの供給に近づいていくのです。
SDGsの目標7を考えると,GSアライアンスの取り組みはターゲット7.2の達成に貢献すると考えられます。
2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
アサヒの取り組み:ビール工場排水でバイオガス発電

アサヒの取り組み:ビール工場排水でバイオガス発電
アサヒビールの取り組みです。
日本では有名すぎるので,会社説明は省略します。
アサヒのホームページから引用した図をまずはご覧ください。

ビール工場排水を使ってバイオガス発電(出典:同社Webサイト)
すっごく簡単に説明しますね?
ある菌(ここではメタン菌と呼びます)がいます。
メタン菌は,有機物を食べてメタンガスを出します。
有機物は,アサヒのビール工場から出る排水にたくさん含まれています。
つまり,ビール工場の排水の中でメタン菌が有機物を食べてメタンガスを出すのです。
メタンガスはエネルギー源として優秀で,電力に変換することができます。
メタンガスを電力に変換する方法として以下の2つがありますが,アサヒは燃料電池を利用した発電に成功しました。
- メタンをガスエンジンで燃焼させて発電(一般的)
- メタンを燃料電池の燃料にして発電(←今回の取り組み)
ガスエンジンの発電効率は40%程度ですが,燃料電池は50%を超えてきます。
効率よく発電した方がエネルギーの無駄が少なくなりますから,燃料電池を使った方が良さそうですね!(コストは置いといて)。
SDGsの目標7を考えると,アサヒの取り組みはターゲット7.2の達成に貢献すると考えられます。
排水を利用するわけですから,持続的な供給が可能になり,『再生可能』に該当しますからね。
2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

まとめ
SDGsの目標7『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』は,5Psのうち『Prosperity(繁栄)』に関するものでした。
また,目標7に関する企業の取り組みのダイジェストとして,
- Abalance:カンボジアへの太陽光発電設備の寄贈
- GSアライアンス:非可食性バイオマスからエタノール生産
- アサヒ:ビール工場排水でバイオガス発電
をご紹介しました。
エネルギー問題にはとても関心があるので,少し厚めの説明になりました。
あなたにも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
SDGs関連の記事をどんどん作っていきますので,また読みに来てくださいね(^^)
コメント
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