
SDGs(持続可能な開発目標)について理解したい。
教科書的な講釈はもういいから、事業で使えるように事例で学びたい!
そういったご要望に以下の内容でお答えします。
- SDGsの目標13(気候変動に具体的な対策を)の具体的な内容
- 目標13に関する企業の取り組み事例3つ(ダイジェスト)
記事を読み終えると,SDGsの目標13を実践的に理解できます。
実践的に理解することで、事業提案に活かすヒントが見つかったり,ディスカッションに深みが増します。
SDGsにピンと来ない方は,ひとまずこの動画をどうぞ。
SDGsの目標13『気候変動に具体的な対策を』の【必要性】

SDGsの目標13『気候変動に具体的な対策を』の【必要性】
SDGs目標13がなぜ必要なのか?
そう問われたら,僕なら『地球に住めなくなるから』と答えます。
まず,わかりやすい数字で現状を見てみます(出典1,出典2)。
- 1℃:産業革命前から地球の平均気温が1℃上昇
- 130万人:1998年~2017年の間に気象災害で失われた人命
- 146%:産業革命前と比較した大気中の二酸化炭素濃度
- 55%:気温上昇を1.5℃に抑えるためには,2030年までに温室効果ガスの排出量を2010年比で55%まで減らす必要がある
- 186ヵ国:パリ協定に加盟している国の数
たった1℃?と思うかも知れませんが,百万人単位で気象災害の犠牲者が出ています。
温室効果ガスによる温暖化が原因と(一般的には)考えられており、被害の拡大を防ぐために,186ヵ国が取り組んでいるのです。
あなたの感覚からしても,気象関係の災害が増えていると思いませんか?
特に『水』に関係する災害です。

水の災害が増えている
雨は大気中の水蒸気が水滴として地上に落ちてくる現象ですが,気温が高いと,大気中により多くの水蒸気を抱えることになります。
より多くの水蒸気を持つ大気に寒冷前線がぶつかると,より多くの水滴が生成される結果,より多くの雨が一度に降ることになります。
その結果,ゲリラ豪雨や集中豪雨などによる水害リスクが高まります。
気象庁のデータによると,実際にゲリラ豪雨・集中豪雨の頻度は高くなっているんですよね。
このまま気温の上昇が続ければ、水害だけではなく、砂漠化や食糧難、海面上昇など、地球規模で様々な問題が深刻化します。
地球が人類にとって住みにくい星になってしまうので,気候変動(特に温暖化)を食い止める必要があるのです。
SDG目標13について,わかりやすいアニメーションムービーがあるので,気楽な感じで観てみてください^^
SDGsの目標13の【具体的内容】
5Psの中の目標13の位置づけ

5Psの中の目標13の位置づけ
SDGsには5つの柱があり,僕は5Ps(ファイブ・ピーズ)と呼んでいます。
5つの柱はすべてアルファベットの“P”で始まるからですね。
具体的には,以下の5つです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
SDGsの17個の目標は,この5Psのどれかの分野に関するものです。
目標13は気候変動に関係するので、『Planet(地球)』に深く関係しています。
5Psについては別の記事でしっかり説明したので,興味があればぜひお読みください。

SDGsの目標13~気候変動に具体的な対策を

SDGsの目標13-気候変動に具体的な対策を
SDGsの目標13は『気候変動に具体的な対策を』です。
ロゴの英語版では『Climate Action』(クライメイト・アクション)と書かれています。
『気候へのアクション』。。。ちょっと訳が難しいですが,『気候に影響を与えるアクション』というニュアンスなのだと思います。
SDGs宣言文の原文では以下の通りに書かれています。
Take urgent action to combat climate change and its impacts
『気候変動とその影響に対抗するために,緊急の対策を!』と訳してみます。
目標13の5個のターゲット

SDGs-目標-ターゲットの関係
SDGsには17個の目標から成り立ち,17個の目標は169個のターゲットから成り立っています。
階層構造ですね。
SDGsの目標13をさらに具体的な達成目標に分解すると,以下の5個のターゲットになります。
No. | 内容 |
13.1 | 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
13.2 | 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。 |
13.3 | 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
13.a | 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。 |
13.b | 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。 |
一般的な知識はここまでにしましょう。
目標13を実践的に理解するために、企業の取り組み事例を見ていきます。
SDGsの目標13【企業の取り組み事例3つ】
今回ご紹介するのは、以下の3つの企業の取り組みです。
- 株式会社イトーキ
- 株式会社マツナガ
- 株式会社未来電力
イトーキ(ITOKI)の取り組み:nona(ノナ)チェアによるカーボンオフセットプロジェクト

イトーキ(ITOKI)の取り組み:nona(ノナ)チェアによるカーボンオフセットプロジェクト
(画像は同社Webサイトから引用)
イトーキは東京都中央区に拠点を置く大手の内装設備メーカーです。
学習デスクのCMを散々見た昭和な世代の僕は,フレーズをしっかりと覚えています。
懐かしすぎて涙が出てきますね。。。
SDGsの目標13に関する取り組みとしては,nona(ノナ)チェアによるカーボンオフセットです。
カーボンオフセットの仕組みは,わかりやすい例で表現すると下の図のとおりです。

カーボンオフセットの仕組み
CO2抑制に貢献するいくつかの対象事業にお金を払うことで、自分でCO2を排出する権利を買うわけです。
例えば、CO2(ほぼ)フリーな再エネの普及に対してお金を払う代わりに,CO2を排出できる権利をもらいます。

ああ,『免罪符』『罪滅ぼし』ってことね!

言い方。。。
イトーキは,インドネシアにおけるREDD+プロジェクト(※)から排出権を買い,nonaチェアの製造~納品までのCO2排出に充てています。

nona カーボン・オフセット概要
(画像は同社Webサイトから引用)
REDD+は,COP11で提案された途上国の森林減少に由来する排出の削減(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries: REDD)に,COP13で合意されたバリ行動計画1における「森林炭素ストックの保全及び持続可能な森林経営ならびに森林炭素ストックの向上」の考え方を追加したもの。(出典)
このカーボンオフセットは,インドネシアの泥炭湿地の保全や修復活動,周辺地域のコミュニティ形成の支援につながっています。
泥炭湿地がオイルパームやその他の用途に転用されると,CO2吸収効果が少なくなるとともに乾燥による火災リスク(CO2大放出!)が増大します。
泥炭湿地を保全・修復することは,CO2排出抑制につながるのです。
↓参考ページ↓
日本でも『J-クレジット制度』が公的に運用されているので、興味のある方は見てみてください。
SDGsの目標13を考えると,イトーキの取り組みはターゲット13.3の達成に貢献すると考えられます。
直接該当する文言はないのですが,イトーキの取り組みを続けることで,『気候変動の緩和に関する啓発,人的能力及び制度機能を改善する』につながると考えられるからです。
気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。

マツナガの取り組み:セルロースファイバーの断熱材

マツナガの取り組み:セルロースファイバーの断熱材
株式会社マツナガは,東京都練馬区に本社を持つ建築設備メーカーです。
断熱,防音,気密等の機能性建築材料の製造販売等を行うとともに,省エネ等のコンサルティングを行っています。
SDGs目標13に対するマツナガの取り組みは,『セルロースファイバー製の断熱材』の普及です。
端的に言うと,『古紙から再生した木質繊維を使った断熱材』を普及させているわけです。

セルロースファイバーの断熱材
(画像は同社Webサイトから引用)
一般的に『断熱材』というと,『グラスウール』『ロックウール』などの鉱物系断熱材や,『ポリスチレンフォーム』『ウレタンフォーム』などの石油系断熱材が有名ですが,いずれも鉱物や石油を原料としており,資源の一方向利用になっています。
これらの断熱材は製造エネルギーが大きいのも気になります。
マツナガのセルロースファイバーの断熱材は古紙を利用したリサイクル品ですし,製造エネルギーがとても小さいのです。
SDGsの目標13の観点でメリットを書き出してみますね。
- 外壁からの熱の逃げを抑えてエアコンの消費電力を抑えられる
⇒消費電力を抑制できれば,発電設備から排出される温室効果ガスの排出量減少につながる
- 製造エネルギーが小さいため,製造時の電力消費を抑えられる
⇒同様に温室効果ガスの排出量減少につながる
SDGsの目標13を考えると,マツナガの取り組みはターゲット13.3の達成に貢献すると考えられます。
イトーキの場合と同様に,『気候変動の緩和に関する啓発,人的能力及び制度機能を改善する』につながると考えられるからですね。
気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
未来電力の取り組み:宇佐バイオガス発電プロジェクト

未来電力の取り組み:宇佐バイオガス発電プロジェクト
(↑イメージです)
未来電力は大分県宇佐市に本社を置く電力会社です。
名前から察するとおり,再生可能エネルギーに特化した電力会社なんです。
再生可能エネルギーの普及自体がSDGs目標13に貢献する取り組みなのですが,敢えて1つピックアップします。
それは『バイオガス発電』です。
宇佐バイオガス発電プロジェクトの概要図を転載します↓。

宇佐バイオガス発電の概要
(画像引用元:http://www.mirai-power.co.jp/sdgs.html)
ポイントを簡潔に挙げますね。
- 食品由来の有機物をメタン菌が食べて(分解して)メタンガスを発生
- メタンガスをガスエンジンで燃やして発電
- ガスエンジンの排熱をメタン発酵槽の加温に使用
- 分解されて残った残りカスを肥料として使用
余すところなく使い切る感じがして,僕の好きなエネルギー利用方法なんです。
僕は仕事で扱った経験がありますが,CO2排出量の削減効果は高いですよ。
SDGsの目標13を考えると,未来電力の宇佐バイオガス発電プロジェクトはターゲット13.3の達成に貢献すると考えられます。
イトーキの場合と同様に,『気候変動の緩和に関する啓発,人的能力及び制度機能を改善する』につながるからですね。
気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
まとめ
SDGsの目標13『気候変動に具体的な対策を』は,5Psのうち『Planet(地球)』に関するものでした。
また,目標13に関する企業の取り組みとして,
- イトーキ:nona(ノナ)チェアによるカーボンオフセット
- マツナガ:セルロースファイバーの断熱材
- 未来電力:宇佐バイオガス発電プロジェクト
をご紹介しました。
気候変動が進むと,地球がどんどん住みにくい星になってしまいます。
今日の取り組みの結果が明日わかるようなものではないですが,未来の地球を守るためにも,行動から始めたいですね。
SDGs達成への取り組みがどういうものか,イメージを持っていただけたら嬉しいです。
SDGs関連の記事をこれからも作っていきますので,また読みに来てくださいね(^^)
コメント
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