
SDGs(持続可能な開発目標)について理解したい。
教科書的な講釈はもういいから、事業で使えるように事例で学びたい!
そういったご要望に以下の内容でお答えします。
- SDGsの目標11(住み続けられるまちづくりを)の具体的な内容
- 目標11に関する企業の取り組み事例3つ(ダイジェスト)
記事を読み終えると,SDGsの目標11を実践的に理解できます。
実践的に理解することで、事業提案に活かすヒントが見つかったり,ディスカッションに深みが増します。
SDGsにピンと来ない方は,ひとまずこの動画をどうぞ。
SDGsの目標11『住み続けらえるまちづくりを』の【必要性】

SDGsの目標11『住み続けらえるまちづくりを』の【必要性】
- 60%:2030年に都市部で暮らす人口の想定割合
- 60%:全世界のGDPにおける都市部の寄与率
- 70%:全世界の二酸化炭素排出量のうち都市部の寄与率
- 60%:都市部による資源利用の割合
- 20億人:ごみ収集サービスを受けられない人口
- 25%:都市人口に占めるスラム街住人の割合(2018年)
- 53%:都市部において公共交通機関を使える人の割合(2018年)
- 90%:都市部において汚染された空気を吸っている人の割合
この数字を見るだけでも,都市部が人類や地球環境に及ぼす影響の大きさが分かりますね。
例えば,都市部には多くの人が住んでいるため,災害に対して脆弱だと被害は拡大するし,大気汚染や劣悪な衛生環境・治安による被害も大きくなります。
一方で都市部は経済成長のパワーの源なので,成長を目指すSDGsの達成には,引き続き重要な役割を担います。
したがって,経済を成長させつつ都市部が起こす問題を解決するために,目標11が存在するのだと考えられます。
SDGsの目11の【具体的内容】
5Psの中の目標11の位置づけ

5Psの中の目標11の位置づけ
SDGsには5つの柱があり,僕は5Ps(ファイブ・ピーズ)と呼んでいます。
5つの柱はすべてアルファベットの“P”で始まるからですね。
具体的には,以下の5つです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
SDGsの17個の目標は,この5Psのどれかの分野に関するものです。
目標11は都市づくりに関するものなので、『Prosperity(繁栄)』に深く関係しています。
5Psについては別の記事でしっかり説明したので,興味があればぜひお読みください。

目標11~住み続けられるまちづくりを

目標11~住み続けられるまちづくりを
SDGsの目標11は『住み続けられるまちづくりを』です。
英語では『Sustainable Cities and Communities』(サステナブル シティーズ アンド コミュニティズ)と書かれています。
『持続可能な都市とコミュニティ』そのままですね。
原文では以下の通りに書かれています。
Make cities and human settlements inclusive, safe, resilient and sustainable
『都市や人の居住地を包括的で,安全で,強靭で,かつ持続可能なものにする』と訳してみます。
目標11の10個のターゲット

SDGs-目標-ターゲットの関係
SDGsには17個の目標から成り立ち,17個の目標は169個のターゲットから成り立っています。
階層構造ですね。
SDGsの目標11をさらに具体的な達成目標に分解すると,以下の10個のターゲットになります。
No. | 内容 |
11.1 | 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 |
11.2 | 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子供、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、全ての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 |
11.3 | 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。 |
11.4 | 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。 |
11.5 | 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。 |
11.6 | 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 |
11.7 | 2030年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 |
11.a | 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。 |
11.b | 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 |
11.c | 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。 |
一般的な知識はここまで。
目標11を実践的に理解するために、企業の取り組み事例を見ていきます。
SDGsの目標11【企業の取り組み事例3つ】
今回ご紹介するのは、以下の3社の取り組みです。
- 第一測工株式会社
- 加賀建設株式会社
- NTT西日本(西日本電信電話株式会社)
第一測工の取り組み:宇都宮市中心市街地空き家店舗情報システム

第一測工の取り組み:宇都宮市中心市街地空き家店舗情報システム
第一測工は,栃木県宇都宮市に拠点を置く会社です。
測量を基本として,地質調査やコンサルティング,土木関係の情報システムを手掛けています。
第一測工は,地元の宇都宮市の空き店舗情報を検索できるシステムを提供しています。
SDGsの目標11との関係を確認します。
空き家や空き店舗などは景観や治安に悪影響を与えます。
国交省の資料『空き家の現状と問題について』(平成26年8月26, 27日)によると,全国の自治体に対するアンケート回答のトップ2が,
- 風景・景観の悪化
- 防災や防犯機能の低下
となっています。

空き家の悪影響(出典:同レポート)
空き店舗を便利に検索できれば、早期に対策を立てられることから,悪影響を低減できます。
オフィスを探しているテナントにとっても,空いている店舗がすぐにわかれば助かるし,入居も早くなりますよね(空室の期間を短くできる)。
SDGsの目標11を考えると,第一測工の取り組みはターゲット11.3の達成に貢献すると考えられます。
居住計画の『管理の能力』の部分に該当するのではないでしょうか。
2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
加賀建設の取り組み:海岸線の浸食防止のための築堤技術普及@東ティモール

加賀建設の取り組み:海岸線の浸食防止のための築堤技術普及@東ティモール
加賀建設は石川県金沢市に拠点を置く建設会社で,土木工事も建設工事も行っています。
加賀建設は東ティモール民主共和国において,浸食防止のための築堤技術を普及させることに取り組みました。

東ティモールって,どこ・・・?

インドネシアの東に位置する国だよ(下の地図参照)。
インドネシア語でティモールは『東』っていう意味だから,めっちゃ東なんだろうね,ここ!
東ティモールの問題・課題としては以下があります。
- オーストラリア,インドネシア,中国向けの仲介貿易港を目指したい
- 港湾の処理能力不足で滞船が常態化して,産業振興のボトルネックになっている
- 海面上昇による水没危機に晒されてるため,措置が必要
- 周辺諸国と比較するとコスト競争力が低く,資本集約・技術型産業,サービス産業の成熟が急務
- 地場の建設事業者にマネジメント可能な人材が乏しく,熟練工も求められている
この状況に対して、加賀建設は以下に取り組むことで築堤技術を提供したのです。
- 海上工事に特化した施工管理者や熟練工の育成
- 地場建設業者との共同工事によってOJTで指導
- 東ティモールの戦略開発計画に沿った人生育成プログラムを策定,実施
SDGsの目標11を考えると,加賀建設の取り組みはターゲット11.cの達成に貢献すると考えられます。
ピッタリ当てはまりますね!
財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。

NTT西日本の取り組み:災害時にも使える通信設備の構築

NTT西日本の取り組み:災害時にも使える通信設備の構築
NTT西日本は,災害対策に貢献しています。
災害時には,身内や友人知人の安否が気になるし,自分の安否も伝えたいですよね。
NTT西日本は,以下の取り組みによって,災害時におけるコミュニケーション手段を確保しています。
- 災害用伝言ダイヤル(171)の設置
- 災害用伝言版(Web171)の設置
- 災害時における公衆電話の無料設置
日本のコミュニケーションの屋台骨を支えてくれている安心感がありますよね。
災害時においては,きっと『NTT』の文字に後光が見えるかと思います。
SDGsの目標11を考えると,NTT西日本の取り組みはターゲット11.bの達成に貢献すると考えられます。
2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
強靱性を高めることなどにより、医療・教育施設を含めた重要インフラへの損害や基本サービスの途絶を、2030年までに大幅に削減する。
まとめ
SDGsの目標11『住み続けられるまちづくりを』は,5Psのうち『Prosperity(繁栄)』に関するものでした。
また,目標11に関する企業の取り組みのダイジェストとして,
- 第一測工:宇都宮市中心市街地空き家店舗情報システム
- 加賀建設:海岸線の浸食防止のための築堤技術普及@東ティモール
- NTT西日本:災害時にも使える通信設備の構築
をご紹介しました。
SDGs達成への取り組みがどういうものか,イメージを持っていただけたら嬉しいです。
SDGs関連の記事をこれからも作っていきますので,また読みに来てくださいね(^^)
コメント
[…] SDGs目標11【住み続けられるまちづくりを】企業の取り組み事例で実践的に理解!SDGsの目標11『住み続けられるまちづくりを』をわかりやすく解説します。現状やターゲットはもちろん, […]
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