
SDGs(持続可能な開発目標)について理解したい。
教科書的な講釈はもういいから、事業で使えるように事例で学びたい!
そういったご要望に以下の内容でお答えします。
- SDGsの目標10(人や国の不平等をなくそう)の具体的な内容
- 目標10に関する企業の取り組み事例3つ
企業の取り組み事例に力を入れているので,記事を読み終えると,SDGsの目標10を実践的に理解できます。
実践的に理解することで、事業提案に活かすヒントが見つかったり,ディスカッションに深みが増しますよ。
SDGsにピンと来ない方は,ひとまずこの動画で勢いをつけてからどうぞ。
SDGsの目標10『人や国の不平等をなくそう』の【必要性】

SDGsの目標10『人や国の不平等をなくそう』の【必要性】
SDG目標10についてわかりやすい動画があります。
『大体こんなイメージ』を掴みたい場合におすすめです。
SDGs目標10がなぜ必要なのか,数字で考えてみます(出典1、出典2)。
- 1%:多くの国では,トップ1%の富裕層の占める収入の割合が増加中
- 40%:一方で,下位40%の富裕層の占める収入の割合は25%しかない
- 54%:移民の権利に関するポリシーを定めている国の割合(105ヵ国中)
- 66%:後進国からの非課税輸出が認めれている品数の割合(2017年)
- 16,000人:防げたはずの病気(麻疹や結核)でなくなる子どもの数
- 3倍:郊外の女性は都市部の女性よりも出産時に亡くなる確率が3倍高い
例えば,貧富の格差の拡大は色々な所で言われていますね。
貧富の格差といっても,『貧』の人たちが豊かな生活を送れているのであれば問題は深刻ではないですが,日々の生活も,生き抜くことさえもままらない状態なのです。
上に挙げた例は数字で表現しやすいのですが,出身地,性別,民族,宗教,年齢,身体的特徴などによって不平等に扱われている事例は枚挙に暇がありません。
こうした不平等によって,一部の人たちが本来受けられるはずのサービスを受けられなかったり,不当な窮地に立たされたりして,現実的に社会から置き去りにされています。
SDGsの根幹は『誰も置き去りにしない』なので,不平等が存在する状態は真っ先に解消すべきものなんです。
SDGs目標10は,SDGsの根幹を達成すべく,目標5のジェンダー問題に限らずもっと広い範囲での『不平等』を解消していきます。
SDGsの目標10の【具体的内容】
5Psの中の目標10の位置づけ

5Psの中の目標10の位置づけ
SDGsには5つの柱があり,僕は5Ps(ファイブ・ピーズ)と呼んでいます。
5つの柱はすべてアルファベットの“P”で始まるからですね。
具体的には,以下の5つです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
SDGsの17個の目標は,この5Psのどれかの分野に関するものです。
目標10は人や国の平等な発展を意図しているので,『Prosperity(繁栄)』に該当します。
5Psについては別の記事でしっかり説明したので,興味があればぜひお読みください。

SDGsの目標10~人や国の不平等をなくそう

SDGsの目標10〜人や国の不平等をなくそう
SDGsの目標10は『人や国の不平等をなくそう』です。
ロゴの英語版では『Reduced Inequalities』(レデュースド・インイークァリティーズ)と書かれています。
直訳すると『撲滅された不平等』ですかね。。。ん〜変ですね。
SDGs宣言文の原文では以下の通りに書かれています。
Reduce inequality within and among countries
『1つの国家の中においても、国家と国家の間においても、不平等をなくす』と訳してみます。
目標10の10個のターゲット

SDGs-目標-ターゲットの関係
SDGsには17個の目標から成り立ち,17個の目標は169個のターゲットから成り立っています。
階層構造ですね。
SDGsの目標10をさらに具体的な達成目標に分解すると,以下の10個のターゲットになります。
No. | 内容 |
10.1 | 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。 |
10.2 | 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
10.3 | 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
10.4 | 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。 |
10.5 | 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。 |
10.6 | 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。 |
10.7 | 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。 |
10.a | 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。 |
10.b | 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。 |
10.c | 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。 |
一般的な知識はここまでにしましょう。
目標10を実践的に理解するために、企業の取り組み事例を見ていきます。
SDGsの目標10【企業の取り組み事例3つ】
今回ご紹介するのは、以下の3つの企業・団体の取り組みです。
- 三承工業株式会社
- 一般社団法人コミュニティビルダー協会
- 株式会社スタイル・エッジ
三承工業の取り組み:夢ハウス

三承工業の取り組み:夢ハウス
三承工業は,岐阜県岐阜市に拠点を置く建築会社です。
戸建てのマイホームって、憧れますよね。
マンションも楽でいいのですが、建物そのものを所有しているわけはありません。
戸建てのマイホームなら建物全体が自分の財産です。
庭や、天井や、階段や、外壁のメンテナンス。。。戸建てで味わえる楽しみは尽きません。
しかし、『一生で1番高い買い物』と言われるだけあって、数千万円のお金が必要です。
世の中は大金を用意できる人ばかりではありません。
ローンだって組めない、または組みにくい人たちも大勢います。
三承工業はそこに『不平等』を見出しました。
『全ての人にマイホームを!』
その想いで提供するのが『SUN SHOW 夢ハウス』です。
グレードにもよりますが、建物のみなら新築一戸建てで1000万円以下も価格帯もあるそうです。
建物のみとはいえ、1000万円以下ですよ?
全国の優良な住宅会社と共同で資材を仕入れることで、コストを低下させているそうです。
下の図をご覧ください。

共同購入によるコスト削減のイメージ
一般的な資材購買の傾向ですが,買う量が増えると単価が下がるのです。
スーパーとかでやっている『まとめて買うと割引!』と同じことです。
合理的な仕組みでコストを下げ,多くの人にマイホームを提供することで,不平等を解消する。
とてもよい取り組みだと僕は思います。
参考URLを下に置いておくので,漫画を見られるとイメージしやすいと思います。
SDGsの目標10との関係を考えると,同組合の取り組みはターゲット10.2の達成に貢献すると考えらます。
経済的にマイホームの購入が難しかった人たちにもマイホームを購入できるようにすることが,経済的な包含(←難しい言葉ですが,豊かさをみんなが享受できる,くらいのイメージかと)につながるのだと思います。
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
参考URL:http://www.yume-house.com/
コミュニティビルダー協会の取り組み:まちかど障がい者アート

コミュニティビルダー協会の取り組み:まちかど障がい者アート
コミュニティビルダー協会は,千葉県市原市に拠点を置く一般社団法人です。
町の工務店が加入する協会です。
コミュニティビルダー協会は,『まちかど障がい者アート』に取り組んでいます。
同協会の説明によると,障がい者の方のアート作品は海外では『アウトサイダーアート』『アーリュブリュット』等と呼ばれており,親しみやすく心和む作品が多いとのこと。
このような特性を持つアートを日本の建築現場で活かす取り組みが『まちかど障がい者アート』です。
具体的には,協会会員による建設現場に,広告主が障がい者アートを利用した広告を出します。
協会の説明だと流れが不明確ですが,協会費用の70%が障がい者支援に活用されるようです。

まちかど障がい者アートの仕組み
広告主は広告効果を得られるし,アートの著作者である障がい者の方も経済的な対価を得られるようになります。
障がいを持つ方の経済的な不平等を解消する取り組みですね!
SDGsの目標10を考えると,コミュニティビルダー協会の取り組みはターゲット10.2の達成に貢献すると考えられます。
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
参考URL:https://www.housingbazar.jp/communitybuilder/page-2834/
スタイルエッジの取り組み:ネクストパラアスリートスカラーシップへの協力

スタイルエッジの取り組み:ネクストパラアスリートスカラーシップへの協力
スタイルエッジは,東京都渋谷区に本社を置く会社です。
士業へのコンサルティングを専門にしたコンサルティング会社ですね。

士業って何?

弁護士,会計士,税理士など,『士』が付いて,一般的には難関国家資格の対象になっている職業かな!『士業』は正式な呼び名ではないけどね。
ちなみに僕も士業の一員だよ。
スタイルエッジは,本業のコンサルティング業務とは別に,パラアスリートの支援活動に取り組んでいます。
具体的には,NPAS(Next Para-Athlete Scholarship)と言われる次世代パラアスリートのための奨学金制度に資金協力を行っています。
障がいをお持ちのアスリートにとっては,経済的な問題はシリアスです。
アルバイトをしたくても,障がいの種類や程度によってはできない場合も多々あるため,アスリートでパラリンピックなどの大会を目指すには,経済的な支援が必要です。
経済的な問題さえなければ一流のアスリートになって活躍できたはずなのに。。。という選手が不平等に晒されて埋もれてしまわないように,スタイルエッジは協力しているのですね。
SDGsの目標10を考えると,京都試作ネットの取り組みはターゲット10.2の達成に貢献すると考えられます。
2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

まとめ
SDGsの目標10『人や国の不平等をなくそう』は,5Psのうち『Prosperity(繁栄)』に関するものでした。
また,目標10に関する企業の取り組みとして以下をご紹介しました。
- 山承工業:夢ハウス
- コミュニティビルダー協会:まちかど障がい者アート
- スタイルエッジ:ネクストパラアスリートスカラーシップへの協力
いずれも経済的な不平等の解消に向けた取り組みでしたね。
本記事を通して,SDGs達成への取り組みがどういうものか,イメージを持っていただけたら嬉しいです。
SDGs関連の記事をこれからも作っていきますので,また読みに来てくださいね(^^)
コメント
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[…] また,差別的な取扱いを撲滅する狙いもあると考えられるので,目標10のターゲット10.2と10.3にも該当するでしょう。 […]