
『エシカル』の意味がぼんやりとしていてよくわからないから、身近な事例で理解したい。
本記事は、そのようなご要望に対して、客観的な視点でスターバックスの事例を噛み砕いてお伝えします。
エシカルとは?

エシカルとは?
エシカルを直訳すると『倫理的な(ethical)』ですが、SDGsなどの界隈で使用する場合は、もう少し具体的になります。
この場合の『エシカル』は,主に生産と消費の文脈(SDGsなら目標12)において多用されることになります。
参考として、一般社団法人エシカル協会は『エシカル』の意味を『人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動』と表現しています。
つまり,消費行動において『エシカル』というなら,『人や地球環境,社会,地域に配慮した消費の行動態様』になります。
『エシカル消費』に関しては解説記事を作ったので、ぜひ参考にしてください。
スターバックスのエシカルな取り組み
全体像

全体像
スタバの『エシカル』の(個人的な)イメージは、上の図の通りです。
スタバの主力商品はコーヒーですから、『エシカル』はコーヒーに関するもので、大きく以下の3つの取り組みに分けられます。
- コーヒー豆の調達
- コーヒー豆の生産地の支援
- 店舗でのコーヒー豆の啓発
スタバは、この3つを押さえることでエシカルな調達を行い、顧客にエシカルなコーヒーを提供しています。
では、順に見ていきます。
コーヒー豆の調達

コーヒー豆の調達
スタバの最重要材料はコーヒー豆です。
なので、コーヒー豆に関する取組みがスタバの命運を決定づけると言っても過言ではありません。
スタバは、この重要なコーヒー豆に『エシカル』を追求しています。
具体的には、コーヒー豆を仕入れる際に、『C.A.F.E.プラクティス』に適合した調達を行っています。
C.A.F.E.プラクティスとは、コーヒー生産者および生産地域との関係を構築しながら、長期的に高品質なコーヒー豆の生産を実現するための持続可能な調達モデルのことを指します(スタバ公式サイトより)。
ちなみた、C.A.F.E.プラクティスは、スタバ単独の力だけではなく、国際NGOのコンサベーション・インターナショナルの協力によって構築されました。
さて、SDGsしかり、ここでも『持続可能』の言葉が出てきましたね。
一時的な努力や仕掛けでエシカルな調達が実現できても、スタバや生産者が息切れするほどの無理をしていたり、犯罪まがいのことをしていたら、その仕組みは長く続きません。
長く続かずに途中で破綻すると、生産農家、従業員、顧客などあらゆる関係者が困ります。
犯罪まがいのことや疲弊するほどの無理が倫理的にアウトなのは明らかですが、結果的に関係者が困ることも倫理的によろしくない、つまり『エシカル』ではないですよね?
なので、『エシカル』には、関係者が無理なく続けられる仕組みとして『持続可能』が求められているのだと考えられます。
スタバが導入したC.A.F.E.プラクティスは、下の図の通り『必須条件』と『第三者機関による評価』から成り立っています。

C.A.F.E.プラクティス
必須条件として『品質』と『経済的透明性』がありますが、品質だけを求めると、サプライヤー(コーヒー豆生産者から購入してスタバに販売する業者)は、バイヤー(スタバ)には高い価格で販売し、コーヒー豆の生産者から不当に安い価格で仕入れるリスクがあります。
バイヤーが暴利をむさぼるリスクがあるわけですね。
『経済的透明性』の基準は、サプライヤーがコーヒー豆の生産者に適切な支払いを行っていることの証明を求めるものです。
この基準によって、サプライヤーに利益が偏る構図を防止しているわけですね。
これらの『必須条件』にて、バイヤー(スタバ)、サプライヤー、そして生産者の関係はエシカルなものになりそうです。
次に、生産者に雇われている現地スタッフや地球環境に対しては『第三者機関による評価』が効果を発揮します。
まず『社会的責任』は、労働環境を守り生活の質を向上させるための評価項目です。
人道的な労働環境や十分な生活環境を実現しているかが評価されます。
ブラックなコーヒー農園だと、『社会的責任』を果たしていない、と評価されてしまいますね。
最後は『環境面でのリーダーシップ』で、コーヒー豆の生産地への環境影響を抑えることが求められます。
コーヒー栽培にも日光が必要であるため、往々にして森林伐採をして大規模なプランテーション方式が採用されがちです。
また、栽培速度を高めるために化学肥料の使用も想定されます。
環境にいいコーヒー栽培には、例えば木陰でも栽培できる『シェードツリーコーヒー』や、有機肥料などで栽培する『オーガニックコーヒー』などがありますが、このような方法で環境影響を抑えているかどうかが評価されるのでしょう。
こういった努力の甲斐もあり、2015年には、スタバが仕入れるコーヒー豆の99%は、C.A.F.E.プラクティスやフェアトレード等の認証を受けたエシカルなものとなっているようです。
コーヒー豆生産地の支援

コーヒー豆生産地の支援
スタバは、コーヒー豆の生産地の支援にも力を入れています。
自社だけでなく生産者も含めて成長することで、コーヒー豆のサプライチェーン全体として成長できますからね。
ファーマーサポートセンターの設置
ファーマーサポートセンターは、コーヒー豆の生産地の近隣に設置され、C.A.F.E.プラクティスなどの導入を現地で支援する施設です。
コスタリカやルワンダなど、世界の複数箇所に設置されています。
センターには、農学や品質の専門家が招かれ、エシカルなコーヒー豆を生産するための技術指導や研修を提供しています。
スタバのエシカルを浸透させるための現地拠点というわけですね!
低金利融資の機会確保
スタバによると、コーヒー生産者の50%が小規模農家だそうです。
小規模農家が潤沢な資金を保有しているケースは少なく、品質の高いコーヒーを生産するための設備投資等を十分に行えるとは限りません。
かといって、小規模農家が一般的な金融機関から普通に融資を受けたら、貸し倒れリスクの高さから、高い金利を提示されてしまうでしょう。
それでは本末転倒ですよね。
スタバは、コーヒー生産者に対して低金利の融資を行うことで、コーヒー生産者の負担を軽くしつつ品質の高いコーヒーを持続的に生産できる仕組みを整備しています。
最近では、『スターバックス・コーポレーション サステナビリティ債』を発行し、債券の販売によって調達した資金を利用にて、小規模農家への低金利融資を行ったりしています。
社会開発プロジェクトへの投資
『投資』と聞くと『金儲けかよ』と思われるかもしれませんが,自社のリソースだけではカバーしきれない範囲において,お金だけは出して得意な人たちにやってもらうのです。
スターバックスは優れた企業だとは思いますが,万能ではないですからね。
NGO/NPOに資金を提供して,生産地における子どもたちへの教育や病院の建設など,生活の質の向上につながる取り組みを続けています。
店舗での取り組み

店舗での取り組み
エシカルコーヒーの日
あなたがスタバに通っているのなら,次回はぜひ20日に行ってみてほしいです。
というのも,毎月20日はスタバの『Ethically Connecting Day ~エシカルなコーヒーの日~』なのです。
以下の通り,エシカルなコーヒーを楽しめますよ。
- C.A.F.E.プラクティス認証コーヒー:ドリップコーヒーとして
- フェアトレードコーヒー:アイスコーヒーとして
僕もスタバにはちょくちょく行くので,次は20日を狙って行ってみようと思います。
99キャンペーン
こちらは年に1度のイベントです。
2015年には,スタバのエシカルコーヒーの購入率が99%に達しました。
その偉業にちなんで,毎年9月9日を『コーヒー生産者の皆さんに感謝してコーヒーを楽しむ日』としています。
カップに『99』と書いてくれたり,感謝しながらみんなで乾杯するなどのイベントがあるそうです。
年に1度の貴重なイベントですから,ぜひスタバ全店で盛り上げていきましょう!
まとめ
本記事では,スタバ流の『エシカル』を解説しました。
具体的には,以下の通り3つの取り組みに分けて,ポイントを説明しました。
- コーヒー豆の調達
⇒C.A.F.E.プラクティスやフェアトレード認証がなされたコーヒー豆を調達。調達率は2015年に99%を達成。
- コーヒー豆の生産地の支援
⇒ファーマーサポートセンターの設置や低金利融資の提供によって,生産者が持続的に成長できるようにサポート。
- 店舗でのコーヒー豆の啓発
毎月20日の『エシカルなコーヒーの日』や,毎年9月9日の感謝デーなどでエシカルを啓発。
ますますスタバのファンになりそうですね^^
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